最近テレビでもよく取り上げられるので、意外とよく目にしているかもしれませんね。
フクロウ(Ural owl)、モリフクロウの雛は、孵化直後は白い産毛に覆われていて、いわゆる白くてぽわぽわの状態です。
小さいうちは自力で体温を管理できないので、母フクロウが巣穴でつきっきりで温めます。
孵化後しばらくの間は巣穴で餌をもらいつつ、兄弟で温めあってぬくぬくしているわけですが、大体1ヶ月くらいで体つきもしっかりして、いわゆる巣立ちとなります。もう狭くなった巣穴を出て、外で換羽(産毛からいわゆるフクロウの大人の羽へ)や筋力をつけていくわけです。巣穴から出てもしばらくの間は、その近くにとどまって、親から餌をもらいます。
このあたり、もしかして開けた巣を作るほかの猛禽と違って、巣で羽ばたく練習ができないからかも? と素人頭で思ったりして。
さてここで質問です。あなたならどうしますか?
山道を歩いていたら、道の脇に白いフワフワ雛がうずくまってます。
1)「あら可哀想に。フクロウの雛が巣から落ちちゃって・・・助けてあげなきゃ」
と連れて帰って世話をする
2)見ないフリをする
3)怪我をしていないか確認して、してなかったら近くの木の枝などに乗せてやる
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さて回答です。
1)連れて帰る
・・・大いなる勘違いです。 絶対にやめましょう。知ってる人がそんなことをしようとしてたら、死んでも止めてください。 もし連れ帰ってきたら、すぐに元の場所に返してやってください。
フクロウの雛は巣立ち直後は飛べません。巣穴から出るにしても、ほぼ落下・・・。うまくどこかに止まれればラッキーというぐらい。地面で白いフワフワの雛がうずくまっていたら、おそらく見た人間は巣から落ちたんだと思うのでしょうが、違います。自分の意思で降りてるんです。その後クチバシと爪で一生懸命木をよじのぼって、木の枝に落ち着くのです。
だから、もし雛を見つけても連れて帰ったりしないでください。
人間を見たことがないので、ヒトが近づいてもぼんやりしてます。でも別に弱ってるわけでもなんでもなくて、好奇心旺盛なだけ、ということがしばしばあります。
これを誤認保護、または善意の誘拐と呼ぶこともあります。やってる人間は善意でやってるんだけどね。だから怒れないんだけどね・・・。この善意の誘拐、フクロウに限らず他の雛鳥でも往々にして起こりえます。長野県では2007年あたりから、基本的に鳥の雛を拾った、という連絡を受けても、「すぐに元の場所に返してください」という指導をするようになったそう。
「拾った〜」と連れて帰って、迷惑こうむるのはフクロウ本人や周りの人間です。
一度人間に連れて帰られた雛の親は育児放棄しますので、いくら慌てて元の場所に連れて帰っても、その後の餌がもらえずに雛は死んでしまうこともあります(親がずっと探してるときもあるけど)。かといって人間に育てられてしまっては、もう野生には帰れません(帰している人がいますが、ろくな狩りの訓練もできずに果たして一冬越せているのか大変疑問です・・・単なる自己満足としか)。
人間のエゴでいらないことをしたばっかりに、野生のフクロウが1羽いなくなってしまうのです。
こういう雛をみかけたら、「ガンバレ」と強く念じて、置き去りにしてあげてくださいね。
小さいときは可愛くても、段々成長して力が強くなり、持て余すようになることも多いでしょう。
迂闊に連れ帰って「自分では世話ができない」と野生動物保護センターに駆け込むのは、日本だけでなくイギリスも同じようです。雛の巣立つ時期になると、あちこちに「モリフクロウの雛は巣立ったばかりです。側溝に落ちていても連れて帰ったりせず置き去りにして!」と貼り紙がしてあるとか。フクロウと都市の人間の住む地域が近くなってしまったために起こる事件なのかもしれません。
2)見ないフリをして放置する
ある意味正解。達人。とはいえ、やっぱり見ちゃったら気になりますよね?(笑)
3)怪我をしてないか確かめて移動させる
一応これが正解。
怪我をしていないか確認して、してなかったら近くの木の枝など少し高い所に乗せてやってください。 あ、でも触る必要がなさそうなら触らなくていいです。
自力で降りたとはいえ、時折本当に怪我をしていることがあります。穴みたいなところにはまって、出られなくなることも。また、近くに猫やカラスなどがいた場合は雛は無防備ですので、できるだけ道から遠いところや、ちょっとでも地面より高いところにおいてやるといいでしょう。まぁ大抵近くに親がいて見守っているので、人間がさっさとその場から立ち去れば、親が雛を保護すると思いますが。下手をすると親に襲われるので、あくまで注意が必要ですが。
ヒナに爪で穴を開けられないように、親に蹴られないように注意しましょう。相当痛いし、場合によっては失明することも。
もしヒナが怪我をしていて、どうしても助けたいと思ったら・・・各都道府県の鳥獣保護担当課に連絡をし、指示に従ってください。許可なく野鳥を飼うことは法律で禁止されています。
<参考サイト>
ヒナを拾わないで - 日本鳥類保護連盟
都道府県の鳥獣保護担当(ただし情報が古い可能性があるので、必ずご自分で確認してください)
「怪我をしたフクロウを保護している」と伝えて取り次いでもらえば、必ず連絡つくはずです。組織名なんかはどんどん変更されちゃうので、あくまで内容で。
財団法人 日本野鳥の会:当会の活動:ヒナを拾わないでキャンペーン
怪我の応急手当と連絡先
一応対象が小鳥だけど、基本は同じ。フクロウは凶器を持ってますから、本当に注意。・・・いい加減成鳥を拾ったときの話も書きます(汗)。
これから春になると、各地でフクロウのヒナの話題がニュースになると思います。みんなで遠くからそっと見守ってあげましょう。
注:一部記事が古かったので、2008/05/15に加筆習性。
ここではフクロウ(Ural owl)、モリフクロウについて書いていますが、もちろんアオバズクの雛だったり、コノハズクやオオコノハズクの雛の場合もあります。サイズは大分違いますが。もちろんどの種類も対応的にはほぼ同じ。健全な雛か、そうでない雛、もしくは危険な場所にいるかどうかで対応が分かれてきます。健康な雛なら、そっとしておいてやってください。親鳥が心配してますから。
2010/06/09 リンク切れ確認のためリンク先変更(過去リンク先。最新は上のリンクをクリック!)
財団法人日本鳥類保護連盟による「ヒナを拾わないで」キャンペーン
http://www.jspb.org/hina.html
鳥獣保護担当一覧(ただし情報が古い可能性があるので、必ず自分で確認してください) http://www.jspb.org/tisiki/hogo.html#tantou
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関連情報です。本州某県で約20年前に、警察からの依頼で、違法飼育摘発の際に保護されたフクロウの雛(密猟されたもの)を引き取って巣立たせた事例がありました。2羽のうち1羽は死んでしまいましたが、残る1羽はフクちゃんと名づけられて可愛がられ、無事巣立ちました。この個体には標識調査用の足環が装着されました。飼育場所付近は主に住宅地と農地で、樹洞がある大木がほとんどないので、彼(?)のために敷地の裏山の木に大型の巣箱をかけました。巣立ってからも時々建物に戻ってきて人間に餌をねだっていましたが、その間に野生個体とつがいになり、巣箱で数年間繁殖しました。つがいの相手や子供は建物にやって来ることはありませんでした。その後戻ってこなくなったので、残念ながら死んでしまったと思われます。フクロウはもともと定住性が強く、この個体は巣立ち後も困ったときに支援を受けることができたという点は大きかったと思いますが、野生復帰が実現不能ではないことを示す例だと思います。
賛同いただきありがとうございます。最近特にフクロウを拾う方が妙に多く・・・。もちろん危ない場所で見つけたり衰弱してる雛を拾って、保護した場合、ちゃんとしたところに届出して、運がよければ野生に返してもらえれば嬉しいのですが。
・・・中にはどう見ても怪しげな経緯のフクロウの雛もいます(汗)。
お話のフクロウ、違法飼育の犠牲になりかかったのに、ちゃんと野生復帰できたのはちょっと嬉しいです。繁殖もできたのは何よりでした。
海外の猛禽でも同じような手法があって、放鳥前に狩りと餌場で餌を食べる訓練をして、放鳥後もしばらくの間は餌のとれないときのために餌場で支援し、徐々に人間から離れていくようにするとか(餌付けではないので、いずれ打ち切る)。ちゃんとやれることはなかなか少ないと思いますが。
フクロウを殺してしまうのも、フクロウを救えるのも人間。少しでも多くの方にこういったフクロウのことを知ってほしいですね。